1952年『公用文作成の要領〔公用文改善の趣旨徹底について〕(昭和27年4月4日 内閣閣甲第16号依命通知)』
公用文改善の趣旨徹底について
文部省教科書局調査課『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕案』1946年
くぎり符号の使ひ方〔句読法〕
理工系の分野の文書表記で読点に「,」、句点は「.」というのは、英数字混じりのことを考えたものかと想像されるが、そうした英数字混じりの多寡は記事により、記事にほとんど数式が含まれない場合が案外多かったりするので、変則的な記号を用いる決定的な理由にならない。そもそも全体が日本語の文章の流れなので、むしろそうした数式が記述されていても、読点は「、」、句点は「。」の方が全体として違和感がない。
マルは文の終止にうつ。テンは、第一の原則として文の中止にうつ(例1)。ピリオドは、ローマ字文では終止符として用ひるが、横書きの漢字交じりかな文では、普通には、ピリオドの代りにマルをうつ。昭和21(1946)年3月・文部省教科書局調査課国語調査室(原文縦書き・旧字体)参考:http://nifongo.style.coocan.jp/kugiri.html
句読点の使い方について調査した資料が掲載されています。『誰も何も考えていないフシがある』とあります。それぞれの決定的な理由については言及されていません。公用文の表記の基準「,」および「。」とはいえ、官報でも「、」および「。」が多いようです。「横書き句読点の謎」渡部善隆 参考リンク:http://ri2t.kyushu-u.ac.jp/~watanabe/RESERCH/MANUSCRIPT/OTHERS/YOKO/ten.pdf
横書き句読点の謎
数式が多く出る科学技術系の文書でも、言語が日本語なので欧文の「,」「.」の流用ではなく、日本語なので縦書き横書き区別せずに「、」および「。」であるべきです。
マスコミの基準は「、」「。」となっています。縦書きの延長として,新聞・雑誌の横書きの文章に多く使われている。ピリオドは、ローマ字文では終止符として用ひるが、横書きの漢字交じりかな文では、普通には、ピリオドの代りにマルをうつ。
マルは文の終止にうつ。テンは、第一の原則として文の中止にうつ(例1)。昭和21(1946)年3月・文部省教科書局調査課国語調査室(原文縦書き・旧字体)
参考:http://nifongo.style.coocan.jp/kugiri.html
くぎり符号の使ひ方〔句読法〕
日本語の左横書きをリードしたのは新聞であったようです。日本語の横書き経緯については、1946(昭和21)年元旦、読売新聞が左横書きを始め、1947(昭和22)年元旦、朝日新聞が左書きを始めたようである。朝日新聞は「おことわり」で「本社はさきに当用漢字、新かなづかいを採用し、紙面の平明化をはかってきましたが、新春の紙面から『左横書』を併用することにしました」。(引用:http://www.marino.ne.jp/~rendaico/gengogakuin/gengokenkyu/nihongoron/sengoshinkanaco.htm)
終戦直後のGHQ国語改革による日本語のローマ字化の危機があります。GHQの方針もあって国語制度の改革が行われた。明治以来のローマ字化論者が呼応した。これにより歴史的仮名の制限と仮名遣いが改変されることになったようです。敗戦後、GHQ民間情報教育局(CIE)の言語課(担当官のロバート・キング・ホール少佐)は、日本語のローマ字化を構想した。これを「GHQのローマ字化計画」と云います。(引用:http://www.marino.ne.jp/~rendaico/gengogakuin/gengokenkyu/nihongoron/sengoshinkanaco.htm)
横書き文での読点が「、」ではなくコンマ「,」になった理由は何か?
結局はローマ字化はなりませんでしたが、折しもこの1945年のことが後の句読点の形ににも影響しているのだろうか?
元来、日本語は、中国語の影響を受けて「縦書き」だった。縦書きしかしない時代が1000年近く続き、江戸後期になって洋学などとの接触によって、初めて横書きが登場した。(引用:http://www.wayaku.jp/blog/?p=1128) 「右横書きは古来のもの」、「左横書き化はGHQの政策として行われた」といった不正確な要素の多い通説がまかり通っている。
右横書きが日本語に登場したのは、江戸末期に描かれた異国趣味の絵図に添える説明文だったようです。日本で初めて普及した横書きは、日本語の事情に合わせてカスタマイズされた「右横書き」のほうだった。だが西洋直輸入の「左横書き」も、実はかなり早く(明治初期)から一部の人々の間で用いられていた。(引用:http://www.wayaku.jp/blog/?p=1128)
カンマと読点(3)
西洋の知識とともに流入した辞書(語学書)、数学書、簿記、楽譜などの書物を教育現場などに取り入れて、使えるようにするには、欧文や算用数字、音符などの符号と和文を共存させなければならない。こうしたときに、左横書きが使われた。1945年の敗戦を迎えると、戦時中の政策の反動もあって、左横書き化が一気に進んだ。
『「右横書き」は縦書きと併用できる庶民のための書き方であり、他方の「左横書き」は技術者や研究者といった一握りの知識階級のための書き方というイメージは十分に定着していた。このことが、横書き文とカンマ・ピリオドの組み合わせを生んだ背景にあると思われる。』とあります。(引用:http://www.wayaku.jp/blog/?p=1128)
『医学書を印刷するために、横組み専用の読点の活字が作られていたことがわかる。
図8と図9で使われているカンマをよく見ると、幅がかなり狭い。欧文用の半角カンマを流用したのではないかと思われる。左横書きが誕生した経緯を考えると、横組み専用の読点を作るよりも、欧文のカンマを流用するほうが、むしろ自然だったのかもしれない。』とあります。(引用:http://www.wayaku.jp/blog/?p=1128)
野澤卓弍「小学校国語教科書・表記の変遷」(九州女子大学紀要41(1)、2004)
小学校国語教科書・表記の変遷
1906年(明治39年)に文部大臣官房図書課が作成した『句読法案』
『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕案』(注4)として文部省教科書局調査課から発表
多くの書き手が、テンとマルではなく、ピリオドとカンマを選んでいたのではないだろうか。左横書きの使い手が主に知識階級だったことを考えあわせても、そうした予想ができると思われる。 『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕案』によって、「横書き」+「カンマ」+「ピリオド」の組み合わせは旧文部省のお墨付きを得ることとなり、正統な書き方と見なされるようになった。(引用:http://www.wayaku.jp/blog/?p=1128)
右横書きではなく、「左横書き」を使うことと、横書きでは「カンマ」と「句点」を使うことが明示されている。以来、現在にいたるまで、句読点に関する新しい表記基準は示されていない。発表から64年も経っているこの依命通知が、日本政府の国語政策に基づく最新の基準ということになる。 (引用:http://www.wayaku.jp/blog/?p=1128)
『くぎり符号の使ひ方』では句点に「(もっぱら)ピリオドを使う」となっていたのが、なぜか『公用文作成の要領』では「『。』を用いる」に変わっている。理由は不明だが、もし欧文の半角ピリオドを流用していたとしたら、「印刷するとピリオドは小さくて見づらい」などの不都合があったのかもしれない。
こうして、「横書き」+「カンマ」+「ピリオドまたは句点」という組み合わせが、日本語における文章の書き方のひとつとして定着し、現在でも多くの書籍や教科書で使用されている。旧文部省が定めた基準に則るという意味において、横書き文にカンマを打つのはけっして傍流ではなく、むしろ本流だ。そのうえ専門知識や海外の文化に造詣の深い人たちが好むスタイルとなれば、熱心な支持者がいても不思議ではない。
当の文部科学省でさえ、横書きの文書でカンマを使わずテンを使っているという事実がある。カンマを使用するのは、法務省、文化庁、外務省の3つだけだ。マスコミでは各社が独自の表記方針を持ち、横書きの和文でカンマを使う新聞社や通信社はない。一般企業も同様だと思われる。
追記 2025.4.15
2022年の「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」と「解説」では、句読点の組み合わせが原則、テン「、」とマル「。」になりました。
公用文作成 公用文作成 公用文作成 公用文作成 の考え方 (建議 )より引用:”句点には「。」読点には「、」を用いる。横書きでは、読点に「,」を用いてもよい句点には「。」(マル)、読点には「、」(テン)を用いることを原則とするが、横書きでは事情に応じて「,」(コンマ)を用いることもできる。ただし、両者が混在しないよう留意する。学術的・専門的に必要な場合等を除いて、句点に「.」(ピリオド)は用いない。欧文では「,」と「.」を用いる。”