自分自身の卒業研究で、人工血液に関わる研究テーマだった経緯がありますので、この話題について少し説明します。
私たちが生命を維持するためには酸素分子(以下、単に酸素と述べます)が体内に必要です。体外の空気に、酸素が含まれているので、まずは空気を吸って生命を維持しています。私たちは、空気中の酸素のみを肺で取り入れ、体の中で発生した二酸化炭素を肺ではき出します。こうした肺の役割は、ガス交換と呼ばれます。肺で取り入れた空気中の酸素は、血液に含まれる赤血球の中にある『ヘモグロビン』とゆるく結合します(錯形成)。酸素とガッチリ反応するのではなく、ヘモグロビンに含まれる鉄原子の部分と酸素がゆるく結合します。つまり、肺で取り込まれた空気中の酸素は、ヘモグロビンにくっつき(錯形成)、これはオキシヘモグロビンとよびますが、心臓によりこれが血流となって、毛細血管を使って体の隅々の細胞まで酸素が『運搬』されます。ヘモグロビンのことを酸素運搬体とも呼びます。そのあと、必要なところで、酸素はヘモグロビンから脱離し、その酸素は末梢組織の各細胞に届けられます。酸素を失ったこのヘモグロビンのことをデオキシヘモグロビンと呼びます。細胞は届けられた酸素を使って必要な働きをし、二酸化炭素が副産物として生成します。二酸化炭素を体外に排出するために、二酸化炭素は赤血球に付着して、血流に乗って、肺に戻ります。肺で、赤血球から二酸化炭素が離れ、息となって体外にはき出されます。デオキシヘモグロビンはまた酸素と結合してオキシヘモグロビンになるのです。これを繰り返します。
次いでですが、一酸化炭素を吸うと人は死んでしまいますね。一酸化炭素の分子はヘモグロビンと非常に強く結合する性質があります。一酸化炭素をすってしまうと、肺で一酸化炭素はヘモグロビンに結合してしまいます。一旦結合してしまうと離れないので、本来の酸素とゆるく結合(錯形成)するヘモグロビンが減ってしまいます。結果、酸素を体内に送り届けることが出来なくなるので、人は死んでしまいます。
話を戻しますが、空気中に含まれる酸素も、二酸化炭素も気体です。血液は液体です。肺がすごいのは、この気体と液体とをうまくやり取りをしていることです。もし肺の中が水び出しになってしまったら、呼吸ができなくなります。肺炎の状況です。肺炎が命にかかわるのは、酸素とのやり取りがうまく出来なくなるからです。肺はガス交換を、液体と気体とのはざまでうまくやっているのです。気体と液体とを工学的にやり取りできる技術には、高分子材料を使ったホローファイバーを使った方法があります。工学技術の見せ所で重要な部分です。ホローファイバーについては機会をみて説明したいと思います。
やっとエクモの話ですが、上で説明した、エクモはこの工学的な膜材を使って、肺がおこなっていたガス交換、つまり、酸素からヘモグロビンにひっつけることを人の肺を使わないで工学技術により実現するものです。装置には酸素濃度や二酸化炭素濃度を測るセンサーや、血液を送り出すポンプが組み込まれています。心臓の手前の静脈血をエクモにつなぎ、酸素を血液中のヘモグロビンに結合させ、このオキシヘモグロビンを静脈や動脈に戻します。二酸化炭素を吸着した赤血球は、エクモで、二酸化炭素が脱離され除去されます。
肺の機能がかなり低下して、結果、酸素がスムーズにヘモグロビンに結合できる状況がなくなったら人は最悪死んでしまします。だから急性呼吸不全になった場合、この装置が使われます。この装置を使っている間に、肺を休ませて、回復を待ち、エクモ呼吸から本来の肺呼吸に戻す状況です。
2009年に新型インフルエンザが世界的に流行(世界で死者14,286人)した時に、全世界でECMOが使用されました。今回のコロナ騒動では、ECMOの利用が急増している状況です。詳しい状況は分かりませんが、50〜70%の生存率が報告されているようです。生存率を高めるための鍵であると思います。
詳細については各自で補足してください。
参考:
世界最小・最軽量の次世代型心肺補助(ECMO)システムの開発に成功~革新的性能により治療成績向上を目指す~
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/181225_press.html
https://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/003060777j.pdf
(2020.4.7 初稿)

