ウランガラスの光

アーティストの松藤孝一先生とのご縁で、ウランガラスを使ったモビールを創りました。

ブラックライト(波長 365nm)を当てると発光します(燐光)。

ウラニルイオン( (UO2)2+ )の電子が紫外線で励起されて、基底状態に戻る過程で520nm付近の緑色に相当するエネルギ-を放出して発光します。

参考:http://physicsopenlab.org/2019/02/05/phosphorescence/

ガラスなので割れる可能性や、加工性が悪いという点はありますが、190年前から時代を超えて、人々を魅了してきたガラスです。

ウランガラスのウランは、ウラニルイオ(UO2)2+として存在し、0.1wt%程度の含有量になってるようです。ウランガラスの法的規制はなく、人体への危険性はほぼ無いとされています。誰でも入手することが出来ます。ガイスラー管を使って放射線の量を計測してみたのですが、数十㎝離れると、自然界と同じレベルでした。

ウランガラスは1830年代にボヘミアを中心に作られました。ガラス造りが盛んで、当時、新しい色付きガラスの技法が注目されました。その頃ウラン化合物による着色が見出されました。今のような高性能なブラックライトなどありませんから、こうした鮮やかな強い発光は当時のガラス職人は見ることが出来なかったはずです。

凡そ60年後の1896年にベクレルが放射能を発見し、ウラン鉱石による放射線に放射能があることが分りました。当時のボヘミアのガラス職人の方々は、ウランの人体に対する危険性を知らなかったことになります。ウランがガラスに微量に封入されていたので、ウランが外に出ることもなかったので、幸運にも、結果的に、安全なガラス製品として流通していったと言えます。私が、ものづくりを支える科学という講義で使っている教科書『科学は歴史をどうかえてきたか』に出てくる、歯磨き粉の話が頭によぎりました。

今日、蛍光や燐光を発する合成材料は無機や有機系で沢山合成されています。下の輪状の線の赤、緑、青の発光は希土類有機系合成材料、中央のトライアングルはウランガラスです。励起波長は365nmで発光させています。

見た目は、どれも鮮やかできれい!です。材料としての発光寿命や耐光性や耐久性などを比較したら、有機系の材料などはこのウランガラスにまったく及びません。このトライアングルの光を見ていると、生命の及ばない物質力と恐怖感、科学技術への期待感や夢など、考えさせられます。あらためて、材料を軸とするものづくりの意味と夢に一石を投じるトライアングルかと思います。

松藤孝一先生は材料にウランガラスを使われ、長崎がご出身であることもあり、このウランガラスによる造形から、生命との関わりなどメッセージを込めた創作活動を展開されていらっしゃるようです。

(初稿 2019.11.4)

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庄司英一 (Eiichi Shoji, MONOZUKURI LAB)
人とロボットが共生する工学技術をめざして、先端マテリアル創造ものづくり研究室として福井大学で活動しています。日頃の研究活動から、開示できる情報を発信します。
庄司英一 (Eiichi Shoji, MONOZUKURI LAB)

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