硬質塩ビの無機強酸類の耐薬品性

発煙硝酸はガラス器具、特にNMR管の様な細い管の内側に固着した有機物の分解洗浄などにはとても重宝します。しかし、その保管につおいては、キャップから漏れ出る揮発ガスで実験器具の金属部分の腐食が起こるので、当実験室に限らず、多くの実験室では保管に難儀しているのが現状です。保管に厄介な無機強酸類と言えば、発煙硫酸、発煙硝酸、濃塩酸などです。これらの試薬を安全にうまく保管する方法を考え、以前、揮発ガスを出さない保管容器を硬質ポリ塩化ビニール(硬質塩ビ)材で製作しました。これは冷暗所で発煙硝酸を入れて数年間経ったもの(右側)ですが、ふたの内側が反応していました。酸化によるラジカル開裂系の反応で塩ビが腐食したと思われます。

中に入れていたボトルのキャップは勿論密栓されたままでしたが、キャップとガラスのネジ口のごく僅かな隙間から内圧の上昇で揮発ガスが長期にわたって少しずつ漏れ出た状況です。多くの実験室ではこれで難儀します。これをしっかり管理しないと、実験装置や排気装置の金属部分などがサビだらけになります。

硬質塩ビの耐性を再確認すると、室温では濃塩酸(35%)には耐性があるが、濃硫酸や濃硝酸、発煙硝酸、発煙硫酸はありません。液体が直接接触しなくとも、密栓していても揮発ガスが長期間にわたって接触するような場合は耐性がありませんので、あらためて、保管は非常に厄介で注意が必要です。この試薬保管のために設計したスペシャル保管容器は発煙硝酸には改良の余地がありますが、他の強酸類や試薬などの保管には特に問題が無くとても重宝しています。

発煙硝酸に関しては、テフロンかガラスで保管容器を製作する必要があります。ガラスは精密加工ができないので、テフロンで切削加工し、パッキンにはフッ素系ゴムを使って安全安心で使い勝手の良い保管容器を作ることが出来ます。

発煙硝酸のMSDSより:

【◎:良好 ○:やや良好(条件による) △:やや不良 ×:不良 -:データなし 】

スチレンゴム× クロロプレンゴム(ネオプレン)× ニトリルゴム× ブチルゴム× 天然ゴム× シリコーンゴム- フッ素ゴム(バイトン、ダイエル)○ テフロン◎ 軟鋼× ステンレス(SUS304△ SUS316△) チタン○ アルミニウム× 銅× 軟質塩ビ× 硬質塩ビ△ ポリスチレン× ABS× ポリエチレン× ポリプロピレン× ナイロン× アセタール樹脂× アクリル樹脂× ポリカーボネート× ガラス◎

The following two tabs change content below.
庄司英一 (Eiichi Shoji, MONOZUKURI LAB)
人とロボットが共生する工学技術をめざして、先端マテリアル創造ものづくり研究室として福井大学で活動しています。日頃の研究活動から、開示できる情報を発信します。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。