【役立つ道具の話】セロハンテープ

工作やちょっとした日常の文房具で案外よく使うテープの話です。知っているようで知らない話だったら価値があります。

商品名だとセロテープが有名ですね。いくつかのメーカーから出ています。この記事を読まれている方もこのテープ使ったことがある方がものすごく多いのではないでしょうか。公開講座で受講生の持ち物に、セロハンテープを持ってくる人も少なくありません。世の中にそれだけ浸透していますね。

セロハンテープは使い方を誤るととんでも無いことになります。使ってよい用途と、使ってはいけない用途があります。素材の性質を考えれば納得する話ですので、素材の性質を知って道具を使う大切さについて、以下説明いたします。

テープの断面図を下に示します。ちょっと分厚いですが、薄いテープと見て下さい。ここで、基材と粘着剤に着目ください。

セロハンテープの透明な基材はセロハンで出来ています。この原料は木材です。木材からパルプを作って化学的に処理してセロハンが作られます。木材はセルロースから出来ており、セロハンの語源の一部になっています。

テープの粘着材には天然ゴムが使われています。ゴム系の接着材です。セロハンもゴムも天然素材ですから、セロハンテープはエコで環境にもやさしい、低コストで作れる画期的な発明品です。セロハンテープを土に埋めたらボロボロになって無くなります。土に帰ります。でも、こうした素材の特徴が用途によっては安定性として問題になってきます。

セルロースを原料としているので、経時変化して、紫外線や酸化により劣化し変色します。粘着剤の天然ゴムも経時変化で劣化し変色します。劣化としてボロボロになります。天然ゴムが紫外線に弱いことは、よく見かける輪ゴムは天然ゴムで出来ていますのでこれを窓際においておくと分かります。状況にもよりますが、一週間くらいで紫外線で分子構造の多くがボロボロになるので、引っ張ると簡単に切れてしまいます。天然ゴムを形成している化学結合が紫外線で壊れる反応が起こるからです。セロハンテープは使われている素材の性質から、経時変化で変色したり、べとべとになります。だから、そうなったら困るという用途に使ったらダメです。

そうなったら困るという用途とは例えば、大切な本を破いてしまった時、セロハンテープで補修したらダメです(この場合、補修テープも良いですが、でんぷんのりと和紙で補修するのがベストです)。セロハンテープで補修すると、素材の性質からその部分が経時変化で黄色く変色しテープもボロボロになってきます。基材を失った粘着材の行き場が無くなるので、べとべとになり、向き合ったページとくっつきます。最悪の場合、そのページ周辺が読めなくなってしまいます。まさかセロハンテープでこんなことになるとは思わなかったことでしょう。確かに、メーカの注意書きにはそのような用途は書かれていません。

包装紙など一時的に使って捨てられる用途や、長期間保存などしないような用途なら、セロハンテープは便利なテープです。でも、長期間保存するような大切な作品となる場合は、一部にも、たとえ裏面で見えないだろうと使ってしまうと、後でにじみ出て変色したりと、少しずつ作品が台無しになっていく可能性があります。こういう用途にはどうするか、それは少なくとも、経時変化を起こしにくいテープ、基剤や粘着剤が分解しにくいものを使うのです。言われればそうですが、そうなっていないのが現実ですね。

具体的には、例えば、ポリプロピレンという合成高分子を基材に、また粘着材はアクリル系接着剤という合成高分子を使ったものが市販されています。

余談ですが、ポリプロピレンは耐薬品性が高いのでアセトンなどの汎用溶媒に接触しても溶けませんが、粘着剤のアクリル系接着剤側が溶け、そこからべとべとになりますので、とにかく用途を考えて使うのがポイントです。どう考えても有機溶媒に接触する機会が普通なら無いならバッチリです。

また、アセテートという半合成高分子を基材に、また粘着材はアクリル系接着剤という合成高分子を使ったテープも市販されています。

これも余談ですが、アセテートはセルロースに酢酸を反応させて作ります。正式名は酢酸セルロースとして知られます。セロハンテープの原料と同じセルロースを使って作るのですが、物性がかなり異なります。原料は一緒なのに不思議ですね。物性として紫外線に強くなります。ただし、アセトンなどの汎用の溶剤に溶ける性質もあるので要注意です。染色性が良いことから、メガネフレームにも多く使われています。アセテートのメガネフレームにアセトンが接触したら、溶けて残念な結果になるので要注意です。

テープの話に戻しますが、メーカによっては別の高分子を基材に使ったものや、変色しにくいとうたっているものならそれも良いですね。使われている合成高分子や半合成高分子などの素材によってテープの用途を使い分けること、それが出来る知識が必要です。万能な道具はありません。大切なのは使う側が素材を知って使うことです。ネットには物性表などが沢山アップされているので、どんな素材が使われていてどういう性質なのかについて目を通すワザが身につくと良いです。そう、これはものづくりのワザです。以下は、例えば旭工業繊維株式会社による一覧表ですが、とても分かりやすいです。他にもいろいろ検索してみてください。

こうした話はセロハンテープに限ったことではないですね。道具を使う以上、その道具の性質を知って使うことが大切です。知識なく使うと怪我をしたり、失敗したりします。使う側の無知が招く失敗です。こんなことを言ったら世の中の多くの道具を使うのが大変になりますね。だから少しでもこの記事が役立つと思いましたので記事にしました。

セロハンテープは、戦後、日本の復興や技術をささえてきた歴史あるものです。素晴らしき発明品としてありがたい思いで使うべきです。よく考えると、セロハンテープが悪いのではなく、それを使ってOKな場所とダメな場所がわかる人に自分がなっていることですね。ワザありの人になっていることです。工作は自己責任です、失敗しながら、少しずつ、工作で失敗しにくい人、ものづくりがうまい人になると思います。もし失敗したら次は失敗しない。

教訓:

・道具はその性質を知って使うことが大切
・失敗は自分の無知から来ることもある
・工作に使う素材の性質を調べて使う
・次は失敗しない

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庄司英一 (Eiichi Shoji, MONOZUKURI LAB)
人とロボットが共生する工学技術をめざして、先端マテリアル創造ものづくり研究室として福井大学で活動しています。日頃の研究活動から、開示できる情報を発信します。

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